2012年3月1日木曜日

数学力の低下について

先日、ニュースにも取り上げられました、「大学生の数学力の低下」について書いてみたいと思います。
ニュース記事に書かれていた内容は、少し大袈裟(偏った?)になっているので、元の判断材料となった、日本数学会のページを参考にしつつ、塾講師をしていた立場から見る現役生の状況も考えてみたいと思います。

まずは、日本数学会の『「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言』を読んでみてください。
細かい内容は、添付文書を読むと分かります。

さて、私は現在大学生であるので、この基本調査に至る経緯における数学の学力低下に当たる世代です。(幅広いですけど…)

経緯にある、心配されていること
(1)読解・表現など国語力 (2) 抽象的・論理的思考力 (3)知識に対する意欲や忍耐力といった、ごく基本的な能力が学生の間で低下しつつある 
論理的文章を理解する力、論理を組み立て表現する力が学生から失われつつある

これは、かなり頻繁に聞く文句だと感じていますし、実際そう思うことも多々あります。
いやはや、お恥ずかしい話ですが、私も大学の試験勉強において、多少の論理をすっ飛ばして学んだことも多いです。

そして、私の大学は偏差値で言えば、ちょうど真ん中ぐらいに位置する私立大学です。
周りを貶すわけではないのですが、大学教養レベルの線形代数・微積分学でさえ、計算はできても意味を全く理解していない人がとても多いです。

例えば、学部2年生の時にあったやり取りを紹介します。

Aくん「この重積分って正の値になるよね?」
私「(被積分関数が積分区間で常に正だから)そうだね。体積求めてるのと一緒だしね。」
Aくん「分かった。」
(試験後)
Aくん「あの重積分の値がどうしても正にならなかったんだけど??」
私「あれは負の値になるよ。(被積分関数イメージしたら当たり前だろ…)」
Aくん「は?重積分は正になるって言ったじゃん!!」
私「???」

てなんてことがありました。他にも、全微分の意味を知らない、テイラー展開の意味が分からない…。
数学科でさえ、使う公式・利用する道具を意味も分からずに使っている人はたくさん居ます。
彼ら(私も含まれますが)にとって、「論理的に理解をする」ことよりも「単位を取る」ことの方が重要なのです。
しかも、このように論理的に理解をしていなくても、「計算さえ出来れば」優秀な成績が付くこともあります。
そのような状況にあるのだから、ほとんどの大学生は「まともな勉強」をしようとは思いません。

つまり、私が言いたいのは、数学力の低下を嘆くのは良いですが、どこかで壁になるものがあるべきでしょう。
その壁が大学にさえないのに、高校・中学校で、どうやって壁を作るのでしょうか。

まずは、中学校を変えて、高校が変わって、大学が最後に変わることを望んでいるのでしょうか。

それが出来るのなら良いですが…。

私がここ1,2年で感じてきたことですが、高校生は悲惨な状況の人が大半。中学生は、2極化が激しい。(出来る出来ない、ではなく、考えている考えていないのレベルで)

数学力と言うよりも、論理的思考力と自立心がかなり低下していると感じます。
数学をマニュアル化して教えている教師や講師が多いからでしょう、理解しようとしている生徒が少ない。(数学に限りませんが…)

いやはや、彼らが成人して働くことを考えれば、他人ごとではなくなるはずです。
自分の子どもたちが、その人達の影響を受けることにもなりますからね…。

この1,2年は、私も生徒を選んでではありましたが、これ以上の学力低下が無いように、「自分で考えること」を、「何が足りていないのか意識させること」を重視してきたつもりです。
それが合わずに、衝突してしまった生徒も何人か居ましたが、負けてはいけないと思っています。

私が正しいとか、そういう風には思っていませんが、正しくないことは正しくないと伝えていこうと思います。そこから何を考え、自分で答えを出すか見守るのが仕事だと思っています。

と、なんか少し逸れて、偉そうなことを書き始めたので、ここらで終わりたいと思います。